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仙台地方裁判所 昭和53年(行ウ)4号 判決 1984年6月22日

仙台市茂庭字折立山六番地

原告

株式会社西花苑

右代表者代表取締役

国分壮

右訴訟代理人弁護士

廣野光俊

川原悟

嶋田喜久雄

塚田十一郎

仙台市長町四丁目七番一五号

被告

仙台南税務暑長

東海林昭吉

右指定代理人

寶金敏明

鈴木洋一

三浦忠

石川智也

加藤郁夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一申立て

一  原告

1  被告が原告に対して昭和五〇年一二月一九日なした昭和四七年度分法人税の所得金額を二億九三八六万三六五三円とする更正処分のうち、六〇三八万四〇五三円を超える部分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二主張

一  請求原因

被告は昭和五〇年一二月一九日被告に対し、昭和四七年度(昭和四七年一月一日から同年一二月三一日まで)分法人税の所得金額を二億九三八六万三六五三円とする旨の更正処分(以下「本件処分」という。)をした。

よって、原告は、右処分中所得金額六〇三八万四〇五三円を超える部分は違法であるから、その部分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

認める。

三、抗弁

本件処分は次のとおりである。

1  本件処分の経過は次のとおりである。

<省略>

2  原告の所得金額二億九三八七万三六五三円の算出根拠は次のとおりである。

<省略>

3  土地買入価額過大計上

(一) 原告は、昭和四七年一一月二八日不動産売買契約により、財団法人赤門学志院(以下「赤門」という。)から別表1記載の甲地等(以下、同表記載の物件につき、右記載の用語の使用区分に従い「甲地等」のように略記する。)を八億五三八七万三五八〇円で取得し(以下「本件契約」という。)、甲地等及び庄司里治ほか一七名所有の乙地と原告が従前から所有していた丙地等を一括して、同年一一月二九日不動産売買契約により、フジタ工業株式会社(以下「フジタ工業」という。)に一六億四〇〇〇万円で譲渡した(但し、乙地は、右フジタ工業への譲渡の時点では未だ原告所有となっていなかったことから、その所有者の庄司里治ほか一七名の事前の同意によりフジタ工業に譲渡されたものであって、事後的に原告は同年一二月一五日売買により、乙地を右所有者から三億七四三六万六三二六円で取得している。)

(二) 原告の経理によればフジタ工業に一括譲渡した本件土地等の価額一六億四〇〇〇万円から甲地等の取得価額(譲渡価格と同額)八億五三八七万三五八〇円と乙地の取得価額(右同)三億七四三六万六三二六円を控除した残額四億一一七六万〇〇九四円が丙地等の譲渡価額であったが、右によれば、丙地等と面積をほぼ同じくし、形状が類似する甲地等の取得価額八億五三八七万三五八〇円は右丙地等の価額に比し非常に高額であり、しかも甲地等は本件譲渡の前年(昭和四六年二月五日)に原告から赤門に三億七五〇〇万円で譲渡されていたもので、かかる経緯に徴しても右甲地等の取得価額が適正なものであるとは到底考えられなかった。そこで原処分調査担当者は、原告に右甲地等の取得価額算定の経緯について説明を求めたのであるが、原告は右価額の算定根拠として、単価算定根基なるものを右調査担当者に提示したにとどまり、しかも右単価算出根基は以下のように合理的根拠に欠けるものであった。すなわち、原告は、右単価算出根基において、甲地等(赤門)と丙地等(原告)の取得価額及び時価から検討を加え、次に取得価額、時価の加重平均によって甲地等、丙地等の価額(単価)を算出したのであるが、<1>右原告の取得価額の検討は甲地等、丙地等の取得時期の相違を無視したものであり、そのため甲地等(赤門)を二万六六六八円、丙地等(原告)を四二九二円と算出したもので、取得時期を度外視して両者を単純に比較するのは恣意的に過ぎること、<2>右原告の時価からの検討においては時価を甲地等(赤門)八万円、丙地等(原告)四万円としているが、当該時価の算定根拠が不明であったこと、<3>右原告算出の取得価額と時価の加重平均については取得価額を二〇%、時価を八〇%としているがその比率の根拠が明らかでなかったこと、<4>原告は最終的に甲地等(赤門)の価額を八億二七八二万七八〇〇円、丙地等(原告)の価額を四億三七七八万五六〇〇円と算出したが、右各算出価額は原告自身が取得価額と時価から検討した右単価と何ら関連づけがないばかりか、本件契約の甲地等の価額八億五三八七万三五八〇円とも一致しないものであったこと等から、原告の右算出根基は合理性、整合性に欠けるものであり、本件についての税務調査を受けるに至って便宜的に作成されたものに過ぎないと考えられた(なお、原告は、審査請求段階においても、単価算出根基及び同旨の書面を提出したが、前記単価算出根基と同様にいずれも合理性、整合性に欠けるものであった。)

(三) 以上のように、原告提示の資料によっては、甲地等の適正な価額を得ることができず、しかも近傍の取引実例、路線価額も存しなかったので、被告は、別表2のとおり倍率方式による相続税評価基準の評価額の割合に応じ、フジタ工業に対する譲渡価額を按分する方法が本件においては合理的であると判断し、甲地等の価額を同表記載のとおり算定した。

(1) 先ず、原告がフジタ工業に対し一括譲渡した本件土地等の譲渡価額一六億四〇〇〇万円から乙地の取得価額三億七四三六万六三二六円を控除して、甲地等と丙地等の合計価額一二億六五六三万三六七四円を算出した。

(2) 甲地等と丙地等の個々の価額については、右一二億六五六三万三六七四円を相続財産評価額の比率によって按分して計算することとし、同表記載のとおり甲地等と丙地等の相続税財産評価額を算出した。

その結果、甲地等の適正価額(客観的な市場価格)は六億一八八九万四八六六円となり、二億三四九七万八七一四円過大評価している。

4  寄付金の損金不算入額

前記過大評価額二億三四九七万八七一四円はもはや土地等の価額ということはできず、右金額は以下に述べるように、公益法人たる赤門に対する寄付金とみるべきである。

税務上の寄付金とは、寄付金、きょ出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与であって、広告宣伝費、見本品費、交際費、接待費、福利厚生費等に当るものを除くものとされ、その寄付金の額は右贈与及び供与の時における価額すなわち時価であり(法人税法三七条五項)、更に資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合に、その譲渡又は供与の対価の額がその資産の譲渡の時における価額又はその経済的利益の供与の時における価額に比して低いときは、その対価の額とその時における価額の差についても実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、これを寄付金に含めることとされている(同法三七条六項)。しかして寄付金には法人の事業に関連を有しその収益を生み出すのに必要な費用といえるものと、そうでなくて単なる利益処分の性質を有するにすぎないものとがあると考えられるところ、法は寄付金として支出された金員等が右のいずれに当たるかを客観的に判定することが極めて困難であるところから、行政的便宜及び公平維持の観点から統一的な損金算入限度額を設け、寄付金のうちその範囲内の金額は費用として損金算入を認め、それを超える部分の金額は損金に算入されないものとしている(同法三七条二項)。したがって、寄付金に当たることが肯定されれば、それが前記広告宣伝費等に該当しないかぎり事業と関連を有し、法人の収益を生み出すのに必要な費用といえる場合であっても寄付金性を失うことはないのである。このように税務上の寄付金は一般にいわれる寄付金の概念よりその範囲は広いものであるが、特に人的、資金的結合が強く、密接な関係を有する会社相互間においては共通した経済基盤に立ち、統一された経営意思のもとに経済的合理性を無視した売買、役務の提供、資金の援助等が行われることがあり、これらの取引の実質は相手方に対する寄付金であることが多いのであって、かかる経済的合理性を無視した取引は通常の第三者間の取引においては、なされがたいものであり、仮にさような取引が通常が課税上是認されるとするならば、通常の第三者間における取引との比較において著しく租税負担の公平を欠くことになるといわなければならない。そして、このような事情は本件の場合もそのまま妥当する。すなわち

(一) 原告は資本金三〇〇〇万円を有する同族会社であり、その株主名及び出資状況等は

<省略>

であり、原告の大口株主である赤門の役員は

<省略>

のとおりであったことから、両法人は人的に極めて密接な関係にあったものであるが、更に赤門と同じ大口株主である株式会社四ツ葉商行の株主構成等は、

<省略>

となっており、原告の主なる株主構成は国分壮とその親族及び親族の主宰する株式会社四ツ葉商工並びに赤門で占められていることは明らかであり、更に国分壮は原告と赤門の代表者を兼務していることから、原告に対し絶大なる支配力を有していたのであって、国分壮の支配力をもってすれば、本件契約において原告に甲地等を高額に取得させることは容易な状況にあった。

(二) 国分壮は、右のような両法人の同族的、一体的関係と以下に述べるような赤門の課税上の優遇措置を利用して、本件契約により原告の納付すべき法人税額の大幅な軽減を図ったものと推認された。すなわち、一般的に高額で不動産の売買取引がなされた場合は適正な価額で取引された場合に比較して、譲受人の転売利益は減少し税負担が軽減される反面、一方の譲渡人の譲渡利益は多額となり、それに対する税負担も増大することとなるが、このことは譲受人の税負担が譲渡人に転嫁されるにすぎず、譲受人と譲渡人の総体的観点からの税負担を捉えた場合は、高額で取引することによって得られる課税上の利益がないのが通常である。しかし、本件においては譲渡人の赤門は不動産の譲渡収入が非課税扱いとされているところから、本件契約によって軽減された原告の税負担が何ら赤門に転嫁されなかったものである。つまり赤門は公益法人であり、収益事業以外の収益には課税されないこととなっていることから(同法四条第一項及び同法七条)、不動産売買については相当の期間にわたり反復的に売買がなされないかぎり課税されることはなく(同法基本通達一五-二-三)、甲地等の譲渡収入に対しても課税を受けることはなく、譲渡収入に対しても取得価額が高額で取決められたとしても、赤門にとっては税負担面で何ら支障がなく、一方的に原告の税負担が軽減される結果となったものである(かかる税負担面での作為的意図の存在は、甲地等が従前原告の所有であり、昭和四六年一一月五日赤門に三億七五〇〇万円で譲渡され、右譲渡の時点からわずか一年後の本件契約によって、右譲渡価額の倍以上の価額八億五三八七万三五八〇円で原告が買戻していること、赤門はその間甲地等を何ら自用に供することなく、前所有者であった原告に使用させていたものであること、本件契約に関連する右買戻し価額は地価の推移を考慮してもなお不自然、不合理な価額であること等からたやすく推認できるものであった。)。なお、フジタ工業に対する本件土地等の譲渡において、赤門からの甲地等の取得価額を通常の価額より高額にすれば、その高額部分は原告所有の丙地等の譲渡価額を圧縮し、ますます税負担が原告にとって有利な結果になることはいうまでもないところであった。

(三) また原告・フジタ工業間の売買が本件土地等を甲地等、乙地、丙地等に個々に区分して契約されたものではなく、一括してなされたものであったため、フジタ工業と原告との間で甲地等の価額についての個別的な合意はなく、乙地の取得代金三億七四三六万六三二六円を差引いた残額一二億六五六三万三六七四円を原告・赤門間で適宜配分したにすぎないものであって、その配分については、原告と赤門両法人の代表者であり、絶対的支配権を有する国分壮の意向によってたやすく左右できる状態であり、事実、配分された価額は赤門に対して過大なものであった。

以上により被告は、本件契約による甲地等の取得価額八億五三八七万三五八〇円のうち六億一八八九万四八六六円(前記(三)参照。)を超える二億三四九七万八七一四円は法人税法三七条五項に照らし、赤門に対する寄付金に該当するものと認め(計算過程は別表2のとおり)、右寄付金のうち寄付金の限度額計算により(同法三七条二項、同法施行令七三条)、二億三〇六九万六六〇〇円を原告の損金から減算して(計算過程は別表3のとおり)、前記のとおり本件処分をなしたものである。

5  仲介謝礼金過大計上

(一) 原告は本件土地等をフジタ工業に譲渡する際、その仲介謝礼金として本所運送株式会社及び本所運送土木株式会社に二億円を支払ったとして、昭和四七年一二月三一日損金経理したが、原告の経理によればその内訳は同年一二月九日三和銀行仙台支店の原告名義普通預金からの二〇〇〇万円、同年一二月一五日同預金からの一億七〇〇〇万円、また同年一一月三〇日赤門からの借入金による一〇〇〇万円の各現金支出であった。

しかし、調査の結果次のとおり支払がなされたこと、しかもすべてが現金ではなくて割引長期信用債券(以下「割引債」という。)、土地により支払いがなされていることが確認された。

<1> 現金支払

<省略>

<2> 割引債による支払

<省略>

なお、右割引債は日本長期信用銀行が昭和四七年一二月二一日及び同月二二日払込価額五二二一万七〇〇〇円で売出したものである。

<3> 土地による支払

引渡物件 北海道積丹郡積丹町大字婦美町一四四の一の原野ほか一五筆

面積八九〇七五平方メートル

登記名義人(権利者)芹沢紀子(竹中啓朗の子)

昭和五〇年七月一八日登記、同年六月一〇日売買

(二) 原告は、経理上割引債については額面価額五五〇〇万円を、土地については三〇〇〇万円をそれぞれ支払額としていたのであるが、原告の割引債及び土地の取得価額は次のとおりであった。

<1> 割引債 五二二一万七〇〇〇円

前記のように右割引債は日本長期信用銀行が昭和四七年一二月二一日及び同月二二日に売出したものである。

<2> 土地 一〇〇〇万円

右土地は新菱貿易株式会社から取得したものである。

右割引債、土地については取得する際、現実に支出した金額が損金となるのであって、原告が仲介謝礼金として損金経理した二億円のうち、実際に支払った金額は、現金で一億一五〇〇万円、割引債の取得に五二二一万七〇〇〇円、土地の取得に一〇〇〇万円、計一億七七二一万七〇〇〇円であり、これを超える現実に支払いのない金額二二七八万三〇〇〇円は過大に損金経理されていた。

6  売上原価過大計上(車両、什器備品)

原告は、昭和四七年一二月二五日遊園地(西花苑)の経営を事実上停止し、これに伴い、什器、備品、車両等が使用不能となったとして、一二一三万九八二〇円を損金に計上したが、什器備品二〇二万八四三一円、車両運般費三五一万円、計五五三万八四三一円は控除不相当である。

7  協力示談金過大計上

原告は乙地買入れについての庄司里治らに支払うべき協力示談金四〇〇〇万円を損金に計上しているが、これは昭和四七年一二月末日までに債務が確定していないから、昭和四七年度の損金に算入することはできない。

四、抗弁に対する認否

1  抗弁1項は認める。

2  同2項中、<1><4><5><7><10>の各項目は認める、<3>項目は二〇〇〇万円の限度で認め、その余を争う。<2><6><9><12>の各項は争う。

3  同3項中、(一)は認める、(二)のうち本件土地売買価額が一六億四〇〇〇万円であること、甲地の取得価額が八億五三八七万三五〇〇円であること、乙地の取得価額が三億七四三六万六三二六円であること、丙地の価額が四億一一七六万〇〇九四円であること、昭和四六年一一月五日甲地につき原告から赤門に対して三億七五〇〇万円で譲渡されたものであること、原告は算定根拠として単価算出根基を提出したことは認めその余は争う、(三)は争う。

4  同4項中、原告の株主、持株、役職、国分壮との関係、赤門の役員、四ツ葉商行の株主構成、被告が主張の如き理由にて本件処分分をしたことは認め、その余は争う。

5  同5項は、割引債の支払により発生した損金額の点を除き、認める。

割引債は五五〇〇万円を損金額とすべきである。

6  同6、7項はいずれも認める。

五、甲地等に対する評価についての原告の主張

1  原告と赤門との間の、甲地等の売買代金について、丙地等の売買代金との不均合をもって被告は脱税の意図のもとに行われた不当な売買であることを強調する。しかしながら、右売買と同時に締結された乙地の売買代金は、丙地等のそれに比べても、なお不当に安く、被告の主張する試算方式からすれば、フジタ工業は乙地を庄司らから不当に安く買受けたことになり、結局被告の試算方式による差額利益分は、フジタ工業が乙地の所有者であった庄司らから寄付を受けたものと看做されはしないだろうか、その意味で被告が無造作に一六億四〇〇〇万円から乙地の取得価額三億七四三六万六三二六円を控除した残額についてのみ、目くじらを立てているのは不思議というほかはない。

仮りに、乙地売買が正当な取引であると被告が認定するのであれば、赤門がもし甲地等を直接フジタ工業に売却した場合、そのまま被告は甲地等の売買を正当な取引として認定しなければならなかった筈である。

このように、赤門の甲地等売先の如何によって税務処理が異なるとすればことは重大であり、赤門の手違いをついた詐欺的徴税法ともいうべきものである。また、赤門が直接フジタ工業に売却した場合でも、被告の主張が成り立つとすれば、もはや原告と赤門の法人格否認にまで発展し、法で認められた私的自治はないがしろにされてしまうことになりかねないのである。

以上からすれば、被告の主張事実は一見まことしやかに聞えるけれども、重大な過誤を犯していることになる。被告の主張を貫くのであれば、乙地の場合にも論じられなければならない筈である。しかるに、被告は、フジタ工業への寄付金追求はしていない。被告の論理の破綻する起因がここにあるというべきである。

2  本件甲地・乙地・丙地は、本来西花苑遊園地(公園)として収益事業がなされていたものであるから、甲地と丙地の譲渡価額の按分計算の基礎としても、収益課税の配慮がなされるべきである。即ち、右遊園地内の各土地の役割(諸設備の設置状況、その利用目的、主たる地か従たる地か等)を極細く考慮に入れて、各土地の夫々の財産評価をするのが客観的公正な財産評価の方法であって、被告の主張のうちには、右の取扱いをなした痕跡すらなく、その評価は一山方法に惰する違法なものである。

却って被告は、買主フジタ工業の宅地造成・開発のための本件土地の買受けという主観的目的を重視し、本件甲地・乙地・丙地の遊園地評価を否定しているものであって、その態度自体が問題である。

六、甲地等の評価についての被告の補充主張

(甲地等の鑑定価額)

甲地等の時価(正常価格)が何程であるかについては、公平な第三者の鑑定評価額を得るのが最も妥当であるので、被告は、財団法人不動産研究所仙台支所(以下「不動研仙台支所」という。)にその鑑定を依頼した。そして右鑑定の結果による価額三億八四三〇円を基礎として、後述のような計算により算出された甲地等の時価(正常価格)は、三億四六五二万〇一七八円(別表4・<1>)である。

すなわち、不動研仙台支所の鑑定評価額(正常価格)三億八四三〇万四〇〇〇円の鑑定対象土地は、本件課税処分でいうところの甲地等と必ずしも同一の関係にあるものではなく、右鑑定評価額は、フジタ工業への一括譲渡において、<1>売買の対象外とした仙台市茂庭字折立山六番二〇を中心とする二〇〇〇坪が含まれており、また、<2>売買の対象となっている建物・構築物(評価時点においては、右建物等は既に滅失しており鑑定評価することは不可能であった。)が含まれていないところの価額であることから、甲地等に対応させるためには、右鑑定評価額に修正を加える必要がある。

そこで、右修正の方法として、右鑑定評価額から売買対象外とした右<1>の土地二〇〇〇坪(六六一一平方米)の価額を差引き、次に売買対象になっている右<2>の建物・構築物の価額を加算して、別表4・<1>のように修正計算を行い、甲地等の時価(正常価格)三億四六五二万〇一七八円を算出したのである。

このようにして算出された甲地等の時価(正常価格)三億四六五二万〇一七八円と赤門から取得(買戻)した甲地等の価額八億五三八七万三五八〇円との開差額は、五億七三五万三四〇二円(別表4・<2>)であり、原告が赤門から甲地等を、実に右時価(正常価格)の約二・四六倍に相当する高額で取得(買戻)しているのである。

理由

第一請求原因について

請求原因事実は当事者間に争いがない。

第二抗弁について

一、抗弁1の各事実(本件処分及びその経過)は当事者間に争いがない。

そこで抗弁2の原告の所得金額を二億九三八六万三六五三円とした算出根拠の各項目(抗弁3ないし同7の各事実)について以下に判断する。

二、抗弁3(甲地等の買入価額過大計上)及び同4(寄付金の損金不算入額)について

1  (甲地等の取得価額)

抗弁3の(一)の事実(甲地等の取得価額等)は当事者間に争いがない。

被告は、右甲地等の取得価額八億五三八七万三五八〇円は、本件契約時における客観的な市場価格(以下「時価」という。)に比し、著しく高額であって、その差額は、本件契約の売主である赤門に対する原告の寄付金に相当する旨主張するのでこの点につき以下に判断する。

2  (甲地等の時価)

(一) 成立に争いのない乙第二七号証(不動研仙台支店作成の不動産鑑定評価書)によると甲地(但し、原告・フジタ工業間の売買において対象外とされた二〇〇〇坪の土地を含んだもの。)の時価は三億八四三〇万四〇〇〇円であると認められる。

そして、各成立に争いのない甲第一ないし第三号証、乙第二号証、第四号証、第六号証、第一六号証、前掲乙第二七号証、証人藤野卓児の証言により成立の認められる甲第八号証の一及び弁論の全趣旨によると、右対象外とされた二〇〇〇坪は、仙台市茂庭字折立山六番二〇を中心とするものであること、甲地等のうちの構築物については固定資産税評価額が定められていないこと、右構築物の原告の帳簿価額、及び甲地等のうちの建物(付属建物も含む。)の固定資産税評価額がそれぞれ別表2の<1>、<2>のとおりであることが認められ、右認定に反する証拠はない。とすると、甲地等の時価は、前記「甲地等の評価についての被告の補充主張」に記載のとおりの算出によって、三億四六五二万〇一七八円であると認められる。

ちなみに、右不動研仙台支店による鑑定評価は、甲、乙、丙地(但し、別表1の備考欄に記載の売買対象外部分を一応含ませて算出しているものである。)を各細分類した上で、それぞれ単独利用した場合の最有効利用に合わせた評価額を査定した上で、右総額と右甲、乙、丙地を一体利用した場合の評価額との差額(開発利益)を各単独利用価額に、その総額に対するそれぞれの価値比率によって配分、加算したものであり、各土地ごとの現況に合わせた評価額の合計額であって、原告の主張する「遊園地的評価」とはいかなるものを指すかは必ずしも明らかではないが、その趣旨に副う評価であり、妥当なものと認められる。

(二) 前掲甲第三号証、乙第六号証によれば、原告は、先の甲地等の取得価額の算出根拠として、原更正処分の調査の際には同号証添付の別紙3を、本件審査裁決における調査の際には、同別紙4、5を各提出したことが認められるが、右はいずれもその算定の基礎となる単価の根拠、加重平均の理由につき不明確なうえ、それぞれにおいても一致しないものであって、到底時価の算定資料となり得るものではないものである。他に、右(一)の認定を覆すに足る具体的な主張立証はない。

3  ところで、時価を超えて支払うべき合理的事実がないにもかかわらず、これを超える売買代金を支払った場合には、支払価額のうち時価を超える部分は、売買代金としての対価性を喪失し、無償の資産の譲渡といえる。そして寄付金につき、法人税法三七条五項は、寄付金の額は、寄付金、きょ出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が金銭その他の資産の贈与または無償の供与をした場合における当該金銭の額によるものとし、同項かっこ内の広告宣伝及び見本品の費用その他これに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきもの(以下、除外費用という。)を除くと定めている。ところで、寄付金の中には、法人の事業に関連を有しその収益を生み出すのに必要な費用といえるものと、そうではなくて単なる利益処分の性質を有するにすぎないものがあるところ、当該法人が現実に支出した寄付金のうち、どれだけが費用の性質をもち、どれだけが利益処分の性質をもつかを客観的に判定することは極めて困難であることから、同法三七条二項は、行政的便宜及び公平の見地から、統一的な損金算入限度額を設け、寄付金のうち、右限度内の金額は費用としての損金算入を認め、それを超える部分の金額は損金に算入しないものと定めている。従って、資産の無償譲渡に当ることが肯定されれば、それが除外費用に該当しない限り、仮にそれが事業と関連を有し法人の収益を生み出すために必要な費用といえる場合であっても、寄付金性を失うことはないというべきである。

これを本件についてみると、前示1、2の結果によると、甲地等の取得価額とその時価との差額は、別表4の<3>のとおり、五億〇七三五万三四〇二円にものぼり、右取得価額は右時価の約二・四六倍にも相当する高額なものであると認められるのであって、営利法人たる原告においては、このような高額の差額部分は、反証のない限り、合理的事情のない、無償の資産譲渡であるものと推認される。

そして、この点について原告は、赤門がもし甲地等を直接フジタ工業に売却した場合に右取得価額と同額であったとしたならば、それは市場における対等の当事者間の取引であって合理的事情の存する正常価額である旨主張するが、右は事実に反する仮定の論議であって採用することはできず、他に右合理的事情を裏付けるに足る具体的な主張・立証はない。

そして、当事者間にそれぞれ争いがなく認めることができる、原告の株主、持株、役職、原告代表者国分壮との関係、赤門の役員、株式会社四ツ葉商行の株主構成等の事実、甲地が本件契約の約一年前の昭和四六年一一月五日に原告から赤門に三億七五〇〇万円で譲渡された事実、甲地等、乙地、丙地等がフジタ工業に一括して譲渡されている事実、成立に争いのない乙第一号証により認められる、原告が法人税確定申告書において、乙地、甲地等についてはその取得価額をもってフジタ工業への譲渡価額となし、譲渡益は丙地等の譲渡によってのみ生じた旨の経理をなしている事実に、証人藤野卓児の証言中の甲地等の取得価額は原告代表者国分壮が専権で決定したことがうかがえる旨の供述部分、先示のとおり、原告提出にかかる甲地等の取得価額の算出根拠は不明確であり、整合性を欠くものであり本訴においても右につき何らの具体的主張・立証がなされていないこと、公益法人たる赤門には被告主張のとおり本件契約による譲渡収入が非課税扱いとされることとを合せて考慮すると、本件契約の売買価額決定は、被告主張のように、租税負担の大幅な軽減を図る税務対策上、経済的合理性を無視したものであることが推認されるところである。

以上によると、先の取得価額のうち、先の時価を超える部分は無償の資産譲渡であるものと認められ、これが除外費用に該当しないことは明らかであるから、右超過部分は売買代金の名義をもってした寄付金であると認めるのが相当であり、右超過額の限度内で二億三四九七万八七一四円を甲地等買入価額の過大計上となし、同額を寄付金に算入した本件処分は相当であって(尚、本件処分は、甲地の近傍の取引事例、路線価が存しないため課税時点においては合理的と認められる方法によって時価を算定した上でのものであって方法自体も容認されるものである。)、違法は存せず、前掲乙第一号証によると、右寄付金の損金不算入額の算定は、被告主張の別表3記載のとおり二億三〇六九万六六〇〇円であると認められ、被告の寄付金の損金不算入額についての本件処分も相当であり、違法は存しない。

三、抗弁5(仲介謝礼金過大計上)について

右は、割引債の支払により発生した損金額の点を除き、当事者間に争いがない。

そして、被告は、割引債の取得のために実際に支出した五二二一万七〇〇〇円についてのみ損金として計上する更正処分をなしたものであるが、割引債の額面価額五五〇〇万円と右実際の取引額との差額の二七八万三〇〇〇円についてまで損金とすることは架空の支払いを損金として認容する結果となるものであるから相当ではなく、本件処分は相当であって違法は存しない。右に反する原告の主張は採用できない。

四、抗弁6(売上原価過大計上)及び同7(協力示談金過大計上)について

右は当事者間に争いがない。

五、よって、被告が原告の昭和四七年度分の法人税の所得金額を二億九三八六万三六五三円とし、これに基づいて、原告に対し、法人税一億〇七六一万六一〇〇円、過少申告加算税四九六万二一〇〇円、重加算税二五四万六四〇〇円を賦課した処分は違法である。

第三結論

以上のとおり本件処分は適法であるからその取消を求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤貞二 裁判官 戸舘正憲 裁判官 橋本英史)

別表1. 用語の使用区分

<省略>

別表2. 甲地等の価額の算定

<1> 甲地等及び丙地等の固定資産税評価額

<省略>

<2> 相続税財産評価額

<省略>

(注) 1. 相続税財産評価額は、固定資産評価額に相続税財産評価通達で定める倍率方式によって計算するとされている(同通達1012・1013)。

2. 構築物については、固定資産税評価額が定められておらず、倍率方式による相続税財産評価額の計算ができないことから、原告の帳簿価額を相続税財産評価額に置換えた。

<3> 甲地等及び丙地等の比率

<省略>

<4> 甲地等と丙地等の合計額

<省略>

<5> 甲地等の価額

1,265,633,674円×48.9%=618,894,866円

(甲地等と丙地等の合計額) (比率) (甲地等の価額)

別表3.

<1> 寄付金の損金不算入額の明細

<省略>

(注) 1. 符号1~7の計算については、法人税法施行令73条参照。

2. 符号2の所得金額の計算内訳は、下表<2>参照。

<2> 所得の金額(法人税法施行令73条2項)

<省略>

(注) 申告所得金額は、繰越欠損金控除及び法人税額から控除する所得税額の損金不算入額加算前の金額。

別表4. 甲地等の時価(正常価格)等

<1> 甲地等の時価(正常価格)

<省略>

(注) 符号2の「売買対象外の2,000坪分74,968,740円」は、仙台市茂庭字折立山6番20の鑑定評価額(正常価格)の1m2当たり11,340円に、6,611m2(2,000坪)を乗じて算出したものである。

<2> 甲地等の時価(正常価格)と取得価額の開差額

<省略>

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